甘酒祭8:埼玉県南埼玉郡宮代町の西粂原鷲宮神社の甘酒祭り

西粂原鷲宮神社の社殿

甘酒との所縁

西粂原鷲宮神社は、旧久米原村に二社あった鷲宮神社の一社で、御祭神は天穂日命(あめのほひのみこと)と武夷鳥命(たけひらとりのみこと)です。

当社の目の前には日光御成道(にっこうおなりみち:中山道と日光街道を繋ぐ脇道)が通っており、1843年には当時の12代将軍である徳川家慶が日光社参の折に、当社で小休憩をした記録が残されています。

この甘酒祭りの起源は不明ですが、地元の収穫感謝祭として行われているお祭りです。当日の流れは、前日の午前中に仕込んだ初穂の稲で造った甘酒を水や塩で濃さと味を調整し、御神饌として一升瓶に納め、神前にお供えします。13:00から式典を執り行い、式典後に甘酒の振舞いと直会を行うという流れで進んでいきます。

甘酒造りや祭りの管理は当番制で行われており、4つの地区(中通り、新田、島、深戸・鎌塚谷)から1人ずつ選任された氏子総代さん4人が担当しています。総代さんの任期は4年制で毎年1人ずつ入れ替わり、古い人→新しい人となる様に伝統を継承し続けています。
今年の甘酒祭りは新田地区の方々が担当していました。

 

同地区では同日に、1.5キロ離れた東粂原鷲宮神社でも甘酒祭りが執り行われており、こちらのお祭りは『おびしゃ』または10月9日に行われることから『九日祭(くにちさい)』と呼ばれています。西粂原鷲宮神社と同じく甘酒を御神饌として用いていますが、3年前から甘酒造りは行っておらず、現在は買ってきた甘酒を用いて祭事を執り行っています。

※宮代町史(民俗偏)によると、西粂原は東粂原と合わせた二村で久米原村という一つの村で、その鎮守として2社の鷲宮神社があったそうです。現在はそれぞれの村に分かれた際に、村の名前を冠した西粂原鷲宮神社と東粂原鷲宮神社として鎮座しています。

 

西粂原鷲宮神社の甘酒祭りの感想

本日は2018年10月9日(火)で、すっきりとした秋晴れ、気温は23〜25℃と程よい…空気は涼しいが日差しがまだ少し温かい。神社前の田んぼはすっかり稲が収穫されており、刈り取った後の稲からまた草が伸びて一面青くなっていました。

今回は宮代町郷土資料館の学芸員『横内様』、氏子総代の方々『福田様、金子様、為ヶ谷様』、そして地元を案内して頂いた『斎藤様』を始めとする地域の皆様からご協力頂き、祭り準備から祭礼の全行程を拝見することができました。

西粂原鷲宮神社の甘酒調整

甘酒造りは前日に米を炊き、そこに麹を加え、米が浸るくらいの量の水を入れて一昼夜発酵させます。

祭りの当日は朝8:40頃から、甘酒の小分けを始め、この時に神様にお祭りする甘酒も一升瓶に詰めます。今回はこの作業からお手伝いさせて頂き、甘酒造りに関するこだわりや、工夫、過去から現在までの推移、過去の甘酒の味の話など様々な事を伺いました!

 

 

昔の甘酒は酸っぱくて香りも良くなく、あまり美味しくなかったそうなのですが、今は造り方を研究し、美味しく造れるようになったと福田さんが話をしてくれました。

その味わいは、香りに臭みがなく、やや酸味の利いた果実味のある甘い甘酒でした。酸味も強過ぎると飲むのが辛いですが、この甘酒はリンゴなどの果実を食べているような味わいと香りがしました…

甘酒の味もじんわりとしていましたが、皆さんの輪に混ぜて頂き、あじわう甘酒は心にもじんわりときました。

 

 

 

昔の情景は写真で見るとセピア色やモノクロですが、昭和も大正も明治も江戸時代もこの様に、その時の甘酒の味や調整方法を話し合いながら作っていたんだろうな…今、目に映っている様なカラフルな光景で…と考えると感慨深さを感じます。

 

甘酒の分配は9:30に終わり、そこから祭りの祭礼が行われる13:00まで3時間半も余裕がありました。この間、地元に長く住まわれている斎藤さんが東粂原鷲宮神社や宮代町のルーツになった所縁の地を案内してくれました。

宮代町という町は、1955年に百間村と須賀村が合併することで誕生しました。その際に百間村の総鎮守である姫宮神社と須賀村の総鎮守である身代(このしろ)神社から『宮』と『代』の一文字ずつを採って名付けられた名前が『宮代』であると聞きました。
この名前のルーツである神社を巡り、その間、さらに幸運なことに東粂原鷲宮神社の甘酒祭りにまで参加できた濃密な時間でした。

町内の案内を終えて、西粂原鷲宮神社に戻ると、ちょうど祭りが始まる20分前。

式典は13:00から20分ほど執り行われ、甘酒は日本酒の一升瓶と並べられるように供えられていました。祭りの名前は『甘酒祭』と述べられており、まごう事なき甘酒が主役のお祭でした!

西粂原鷲宮神社の甘酒祭りのお土産

その後、集会所に移り、氏子さん達は直会を行い、その間に参拝者の甘酒を振舞うという流れで進んでいきました。
※朝に皆で詰めた甘酒

 

 

 

最後は直会の席にも招いていただき、より多くの方から昔の祭りの様子や現在の祭りの話を伺うことができました。

10月9日と祭日が固定であることから、平日開催となった平成最後の西粂原鷲宮神社の甘酒祭、参拝者も少なく、地域でひっそりと受け継がれている祭りの姿を体験することができ、地域の皆様の温かさを体験できる素敵な時間を過ごせました。

来年も同様に8日に甘酒仕込み、9日に式典を開催するという話です。

改めて、今回、お世話をしていただいた斎藤様を始めとする氏子の皆様、学芸員の横内様に感謝の意を表して筆をおこうと思います。

 

甘酒祭りの情報

開催日:10月9日13時から開催(甘酒振舞いは式典後の13時半ごろから)

最寄り駅:東武スカイツリーラインの和戸駅から徒歩16分

住所:埼玉県南埼玉郡宮代町西粂原660